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 てのなか番外篇
イギリスのポップアート

“大衆”というモチーフ

September 00

 

20世紀をふりかえる時、その中心に位置しているのは「大衆」である。
20世紀においては、「大衆」が世の中をよい方へも悪い方へも動かして来た。
「大衆」が中心の世紀で美術も彼らとともに生まれていた。

特に、今世紀なかばに生まれた「ポップアート」が代表的な例である。
「popular」の名のとおり、「ポップアート」は「民衆の, 人民の, 大衆の」ものであり、
「人気のある, 評判のよい」スタイルであったことは確かである。

だが、それは単に、 「大衆」におもねるように存在したアートではない。
むしろ逆で、「ポップアート」ほど「大衆」をシニカルに照らし出した表現はなかったのではないか。
「ポップ・アート」という名称の発祥元に関しては諸説あるが、ここではとりあえず、
その活動の中心であったイギリスのICA (Institute of Contemporary Arts) の周辺から探っていくことにする。

1956年、イギリスの作家リチャード・ハミルトンが、世界で最初のポップ・アート作品といわれる、
一点のコラージュ作品を発表した。
「一体なにが今日の家庭をこれほどまでに変化させ、魅力的にしているか」という長いタイトルの、
この作品について、作者ハミルトンは「私の目的は、日常的な事物と日常的な生き方の叙事詩とは何かを
探究することにある」と述べている。

そして、彼はまた、「ポップ・アート」について次のような定義をもつくった。

Pop Art is:
「ポップアート」とは;

Popular(designed for a mass audience)
「うけ」がよく(大衆向き)

Transient(short term solutions)
すぐ消えて(短期間でおしまい)

Expendable(easily forgettable)
使い捨てで(カンタンに忘れられる)

Low Cost
金がかからない

Mass Produced
大量生産されたもので

Young(aimed at Youth)
ガキくさい(若者をターゲットに)

Witty
おしゃれで

Sexy
セクシーで

Gimmickly
ちょっとした「いかさま」もある

Glamorous
魅力的な

Big Business
「金もうけ」のことである。
   /註1

 

彼を含むIG(Independent Group)は、当初、美術における「美学的」領域をとびだし、
たとえば、空想科学やサブカルチャーなどの大衆文化、工業産業などと美術との連関といったようなものに重点を置き、
従来のタブロー・彫刻などといったような作品制作とは別の方法でアートにアプローチした。
その活動の一部として、当時、彼等は「空想科学小説」「自動車のスタイリング」「ポピュラー・ミュージック」
「消費社会」などをテーマにした討論会を企画している。また、特徴的なことは、彼等のメンバー構成にもみてとれる。

前述のR・ハミルトンとエドワード・パオロッティをのぞいては、美術評論家や写真家、建築家などであり、実際IGは
作品制作を主眼とはしていなかったのである。

以上のようなIGの活動は、このころの社会の変化に大きな影響を受けていることは間違いない。
基本的に、IGは、このころイギリスに入り込んで来た「アメリカ的」社会システムに対して、自国の文化保護しようと
する意図をもって結成され、事実、前述のハミルトンの作品は、イギリス人特有のやり方で、アメリカ文化を皮肉って
みせたものに他ならない。
ここでいう「アメリカ的」社会システムとは、影響力のつよいマスコミと、大量消費を促す広告が幅をきかせるライフ
スタイルによって、「大衆」の文化が一元化されやすいシステムのことである。
第二次世界大戦後にやってきた、増殖しつづける「アメリカ」的資本主義にもとづく消費社会の文化が、伝統や階級の
支配が残るイギリス文化の中へ取りこまれつつある現状を目のあたりにした時、彼らは、この新しい社会の流れを、
いかにカタチにしようかと考えた。
彼らIGのメンバーは、それを「ポップアート」というやり方で提示しようとし、その代表的な作品であるハミルトンの
「一体なにが今日の家庭をこれほどまでに変化させ、魅力的にしているか」というコラージュとして帰結した。

それが、旧態のスタイルである、タブローや彫刻といったものではなく「大衆」の身近にあるものたちの寄せ集めに
よって表象されたことが、後の美術作品のスタイルとして、今現在も主流な方法論のひとつになっている。

 

<註1>
quoted / a letter writen by R.Hamilton
to the Smithsons, dated 16 Jan. 1957
p117『THE INDEPENDENT GROUP』 Manchester University Press/1995
*日本語訳は拙訳

<参考文献>
『ポップ・マニエリスム』日向あき子 沖積舎/1993
『ポスト・ポップ・アート』 ポール・テイラー編 岡村多佳夫訳 スカイドア/1994
『THE INDEPENDENT GROUP』
Manchester University Press/1995
『POP IMPRESSIONS EUROPE/USA』
The Museum Of Modern Art, New York/1999
『踏みはずす美術史』森村泰昌 講談社現代新書/1998
広告批評 特集TOKYO POP マドラ出版/1999



 

 『THE INDEPENDENT GROUP』
 Manchester University Press

 『POP IMPRESSIONS EUROPE/USA』
 The Museum Of Modern Art, New York

 
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