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 てのなか番外篇
【ヒト】松本隆 × 松田聖子 「オンナノコ」の原点。 10/4/28

たぶん。
世代によって、「理想の女性像」「理想の男性像」ってだいぶちがうと思うのです。
育ってきた時代とか環境によって、あと、社会通念みたいなものも変わりますしね。

わたしは以前から「理想のタイプは?」という質問が苦手。
小中学生のころでさえ、好きな男性アイドル、とかも答えられなかったくらいです。
同世代で人気のあるひとだとか、世間的に誰もがわかる「このひと」っていうひとが
自分の「好み」だと思ったことがあまりないからかもしれません。

ただ、「年上のほうがいいでしょ」とは、よく指摘されるような気がする。
実は年齢はあまり関係ないんだけど、たしかに男女問わず「オトナだな」と感じるひと
は一緒にいて居心地がいいけど、逆に精神年齢の低いひとはやっぱり苦手かもしれない。
元来、「こまっしゃくれた」やつなので、自分より年上でも「そういう片鱗をみせる」
ひとには冷たいと思う。ただし、だいぶオトナなので、表面上は取り繕えますがね。

ところで、「オトナとはなにか」。
基本的に泰然として構えて、あわてないひとのことだ。
「泰然として構える」ことができるということは、モノゴトを冷静に、かつ、客観視
できているということ。ゆえに、じたばたと騒がないし、的確な判断ができる。

どうよ。これは「THE オトナ」でしょ。

そして、例の小説がらみでいうと、もうひとつ大事なファクターがある。
それは「だいじなひとをちゃんと見守る」ことができるのが「オトナ」。
‥‥て、書いてるそばから気恥ずかしくなってきたのと同時に、むなしくなるので、
これ以上はつづけません、いえ、つづけられませんが、ここでも、そんなオトナに
「見守られてる」女子たち(郁も、毬江ちゃんも、折口さんも!)は‥‥無敵なのだ。
まぁ、たぶんに「フィクション風味」増量キャンペーンでもやってくれないかぎり、
現実に、こんな場面には、きょうび、なかなか出くわしませんがね。

まぁ、そんなこんなで楽しく読書が進むなか、ふと、どこかでも、こんな感じの
「フィクションのなかの、かっこいい大人の男性像」と出会ったことあったなぁと
記憶をたどってみたら、それは‥‥「聖子ちゃん」だったのでした。

正直、現在に至っては松田聖子さんのフォロアーではないため、手元の音源て
完全にその当時のもので、「カセット&LPレコード」なんですよ。きゃーー。

で、CDを借りて(スミマセンね、「買って」じゃなくて)みました。

「これは、ベストセレクション!」というのが「Diamond Bible」の「Disc 2」でした。

この当時から25年以上(し、四半世紀!!)経ってるわけですが、
わたしも、ずいぶんとひさしぶりにあらためて聴いたら、ちょっとすごかった。
いわゆる「流行歌」で消費されただけのものじゃなく、「楽曲」として成立してます。

しかも、現在進行形で。

その「すごさ」の大部分を占める張本人は「松本隆さん」に他なりません。
以前にも、こんなことを書いたことがありました。

松本隆さん、は、わたしがいまさら言うまでもなく、誰もが認める作詞家です。
はっぴいえんど」というバンドでは「ロックに日本語という言語をのせる」という
画期的な「実験」をしていました。もちろん、その音楽性のクオリティの高さも、後年
フォロアーを自認する「ミュージシャン」たちが多数登場していることで、実証済み。

その文学青年が、なんの因果か「歌謡曲」という世界にひっぱりだされた。
時代の風をうまく感じ、切り取った「物語」たちは、ヒット曲として、つぎつぎと世に
送りだされることになり。

その最たる曲のひとつが、「木綿のハンカチーフ」だと思います。
太田裕美さんによって歌われたこの楽曲が世に出た1975年当時、ちびっこでしたが
記憶には残っている曲。ただ、ほんとうの意味で、この曲を「聴く」ことができたのは、
ずっと後のことです。
10代のころ、自分が生まれたころの音楽を好きで聴いていたなかで出会った「はっぴ
いえんど」。その流れで、あらためて聴いた「木綿のハンカチーフ」。
一曲、最初から最後まで、とおしてきいてみてくださいね。
下手な小説より、ずっとずっとココロに深く響く、名作ですので。
まぁ、よく考えると、数分の「うた」のなかにあれだけの「物語」を描き出せる、って
いうのは、ある意味、「小説以上」なのかもしれません。

たぶん、完璧に「大人なメンタリティ」を持っていて、かつ「チューンスミス」ならぬ、
「作詞職人」なのだと思う。そのあたりは後述。
※「チューンスミス(tune smith)」って最近読んだキャロル・キングのインタビューにあったコトバ。
彼女自身が「わたしは自分が“チューンスミス(作曲職人)”って呼ばれるのが好き」と話してました。
なんだか、かっこいいよね。「作曲職人」て。
松本さんの場合は、作詞なので、さながら「lyrics smith」といったとこか?


で、「ウィキペディア」あたりでこのあたりの事情を軽くひっぱってみました。
このディスクに所収されてる楽曲をうたっていた当時(1983年 - 86年)の聖子さんって、
10代の「ぴちぴちなオンナノコ」から 20代になり、「すこし背伸びした大人の女性」
へとうつり行く時期で、ちょうど、自身がご結婚された時期とも重なります。
そして、結婚したお相手も「オトナ」なひとでしたしね。

もしかしたら、自分自身の人生も、自分の歌のなかのフィクションの世界と重ね合わせて
いたところがあったのかもしれません。

当然、まわりのスタッフも、
「アイドルの聖子ちゃん」をいかに「大人の女性アーティスト松田聖子」にするかで、
あーでもない、こーでもない、やってたころなのでしょう。
オファーをかけた作家陣、いまから考えても凄すぎる面々です。
さらにいえば、
その作家陣の楽曲を歌いこなした、二十歳そこそこの「松田聖子」という歌手の力量も、
やはり並外れたものだったのでしょうね。

とにかく、この作家陣がつくりだした楽曲を残してくれたことは、
のちのち、大きな意味を持ちました。

■「作詞家:松本隆」の描き出す物語とは

現在もなお、熱狂的な女性フォロアーたちをもつ、聖子さんですが、そのひとつの要因が
彼女の楽曲にでてくる「主人公」にあるのだそう。

イコール、それは「作詞家:松本隆」が生み出した、その時代を映し出す「オンナノコ像」
であり、「理想の女性像」でもあったはずです。見方を変えると、そこにいる、主人公の
女性をみつめる「男性像」もある種の「理想型」として描いていたのかもしれません。

男性に愛されやすいタイプというより、自分の道をゆく、芯の強さがある。
ココロに甘い想いを抱きつつ、さみしさに溺れそうになっているくせに、どこまでも前向き。

たぶん、このころの「オンナノコ」たちは、「聖子ちゃん」の曲を聴いているとの同時に、
それらの曲の主人公にあこがれを抱き、そのヒロインが登場する「オトナな、恋愛小説」の
ような曲の世界に夢中になっていたのではないでしょうか。

この「Disc 2」から何曲か、そんな「すてきな物語」をひろってみますね。

「セイシェルの夕陽作詞: 松本隆 、作曲・編曲: 大村雅朗

コドモのわたしからみて、「大人な恋」の曲でしたね。これ。
「熱い紅茶飲みながら なぜかしら 涙ぐむ」とか。
コドモが思う、「大人」。
しかも、それは「セイシェル」という、未知のリゾートのバンガロー。
でも、夕陽が沈む、このシーンは、完璧にアタマに描けましたね。
「どこだかよくしらないけど、さぞかし、ひとがいなくて、
 しんみりするにはうってつけの、うつくしいとこなんだろうな。
 それにしたって、わざわざひとりでくることはないのに。
 いっしょにくればいいのに。」
などと思ったもんさ。

哀愁をおびたトランペットと、オレンジ色のさざなみと。
わたしのなかの「大人っぽい恋」の演出は、大村さんが担当してます。
確実に。

「ガラスの林檎」作詞: 松本隆、作曲: 細野晴臣、編曲:細野晴臣・大村雅朗

たぶん、いまでも弾けるかもしれないな。ピアノで耳コピしてた曲です。
細野さん、て、すごいよね。細野さん、自分じゃ歌わないでしょ、これ。
でも、ひとの楽曲として、これだけのうつくしい旋律をつくるんですよ。
しかも、繊細で「乙女」だし。
ちなみに、ウィキペディアによれば、
サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のような曲を」
というオファーだったらしい。

松本さんの歌詞の世界観も好きです。最初の2行だけで情景描写をして、
あとは延々とせつない、乙女のココロのつぶやき。
で、クライマックスに向けて、曲のタイトル「ガラスの林檎」が複数形に
なってリフレインして、うたの世界観がフェイドアウトしていくのです。

すごいなぁ、ほんと。
ほかの楽曲もそうだけど、松本さんの歌詞は、文学的、というか、
詩的にも、レベルが高度すぎ。

「SWEET MEMORIES」作詞: 松本隆、作曲・編曲: 大村雅朗

これまた、ウィキによれば、この楽曲は聖子さん21歳のときだそう。

この楽曲の「メロディ」と「物語」を21歳のオンナノコが歌いこなしていた
ということにも驚きだけど、このうたをこの歌手に歌わせようとした、周りの
スタッフの勇気がすごい!
そのオファーに完璧な楽曲を提供した松本さんと大村さんの音楽家魂にも脱帽。

この作家たちの後日談として、
「当時の等身大の彼女の何歩も何十歩も先の楽曲をつくった。
 でも、それを彼女はすっかり自分のものにしてしまった。」
というコメントがあるのだけど、
たしかに、だからこそ、時間を経てもなお、スタンダードたり得るのだろうね。

ちなみに、これまで多くのカバーがされてますが、申し訳ないけど、
この楽曲については、あのアレンジ、歌唱がつくりだした世界観を超えるものに
いまだお目にかかれません。

「瞳はダイアモンド」作詞: 松本隆 、作曲: 呉田軽穂(松任谷由実)、編曲: 松任谷正隆

ユーミンは、どうして、いつだって、こんな「コ洒落た」メロディを生み出すんだろう。

「呉田軽穂(くれたかるほ)」というペンネームは「グレタ・ガルボ」のもじり、という
のは有名なハナシだけど、その「クレタメロディ」を軽やかに構築する松任谷正隆さん
のアレンジも秀逸。「映像的な音楽」に仕上げてあります。

この「Disc 2」のラインナップで一番好きなのは、実はこの曲。
松本さんが紡ぎ出した、歌詞のひとつひとつが、上質なモノクロームのフランス映画
のワンシーンのようにひろがります。

松本さんの歌詞、ユーミンのメロディ、聖子さんの歌唱。
この3つで、完璧に成立してしまった「物語」。

「蒼いフォトグラフ」作詞: 松本隆 、作曲: 呉田軽穂(松任谷由実)、編曲: 松任谷正隆

すこしはねあがったメロディラインからしても、
この時期、よってたかって「大人のミュージシャンたち」が、
はたちそこそこのオンナノコに提供しつづけた一連の楽曲のなかでは、
聖子さん自身の実年齢と曲の主人公とのメンタリティが、ぴたりと一致して
いると思われる楽曲。青春群像ドラマの主題歌でもありました。

ちょっと強がってみせるとこが「かわいい」の範疇の年代の女の子が主人公で。
悲しいかな、年齢的に、ある「一線」を超えると、
それは「ただの我の強さ」としか受け取られかねません。

「Canary」作詞: 松本隆 、作曲: SEIKO、編曲: 大村雅朗

これ!ここの「彼」が、最初にいってた「理想?の大人の男性像」です。
「見守り」系のオトナ、でね。
この曲、一曲で映画とれそうなくらい「物語」としての深さを読み取ってしまう
のです。行間、旋律、そこらじゅうから、ドラマがあふれだすような。

とはいえ、ですね。
わたしが、この曲をリアルタイムで聴いてたのって、
小学校高学年から中学生くらいのころ、なんですね。
そのころから、「そんな物語」を読み取って理解していたのか、あたしよ。
空恐ろしいな、そんなガキ。

「ハートのイアリング」作詞: 松本隆 、作曲: Holland Rose(佐野元春)、編曲:大村雅朗

ピアノのからんだ、イントロ部分とかが「佐野風」です。
ただ、「佐野」が、なぜ「Roseさん」だったのかは、
今となっては知る由もありませんがね。

ここに登場する「オンナノコ」って、女子的には共感したくなるコなのです。

だから、ね。
どーして、「松本隆」という作詞家は、そんな「オンナノコ像」を描けるのか、
がナゾなのです。

しかも、「ハート」というカタチとは対極な結末。男前でした。



と、ここまでが「松本隆」作品。

以下は、おなじCDに所収されている曲の、いわば「番外編」。
「松田聖子」サウンドは「名アレンジャー大村雅朗」さんが支えていたことも、
最後に追記しておきます。
大村さんのアレンジについては、
後年、数多く手がけたEPICソニー系のアーティスト(渡辺美里さん、大江千里さんなど)の楽曲のアレンジにも
いまでも好きな曲がたくさんあります。残念ながら、いまある作品がすべてですが、時間が経っても聴き継が
れている曲たちであるのは間違いありません。


「天使のウィンク」作詞・作曲: 尾崎亜美、編曲: 大村雅朗

いまから思うと、
「はは〜ん、このあたりで、いったん軌道修正したのかな」と思える一曲。
おもいっきり「はじけ」ちゃいました、一転して。

あくまでも「ラブリー」。色にしたら「ピンク」。「ふわっふわ」、でし。

尾崎亜美さんのお得意なポップな曲調と「ラブリー&ピンクでふわっふわ」が
ぴたり、はまった曲です。
ここまでの「ちょっと、背伸びの大人」を完全に払拭しちゃったんでしょうね、
このあたりで。

たぶん、「聖子ちゃん」は「かわいい」のが好きだった、んだろうな。きっと。

「ボーイの季節」作詞・作曲: 尾崎亜美、編曲: 大村雅朗

おなじく、尾崎亜美さんの楽曲。アレンジは大村雅朗さんです。
同タイトルの映画のメインテーマでもあります。

エンドロールに流れてたのを記憶してますが、映画のエンディングでストーリー
全編に深い余韻を刻み込むような、ディレイのかかったシンセサウンドと、
やさしい風に包まれたような、ここちよい曲のひろがり。
大村さんのアレンジが、この曲の世界観をよりいっそう、くっきりと描き出して
いるのは間違いありません。



いかがでしたか?
「恋愛小説を読む」ように、ひとり静かにこれらのメロディに耳をかたむけたら、
自分のなかにいる「かつてのオンナノコ」に再会できるかもよ。


 

「Diamond Bible」
松田聖子

 

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あの曲も、この曲も‥‥!珠玉のポップスたちの響宴。

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